これからの時代の恋愛戦略(仮)

人はドロドロするからこそ人らしい。

【書評】「ぼくは愛を証明しようと思う。」を読んだ感想を書いてみた。衝撃のラストに思わず唸った。

ぼくは前の彼女と別れてから1年半一人だった。
女の人とご飯を食べに行っても特に発展もしない、いわゆる非モテ(モテない)マインドになっていた。アプローチしようにも断られることが怖いのだ。
 
ビジネスは自分でやっていたので、いつものように何かアイデアやいい情報がないかホリエモンの本を読んでいると、あるメルマガが紹介されていた。
それは、後にぼくの2年の沈黙を破るきっかけとなった藤沢数希さんの「週刊金融日記」だ。

magazine.livedoor.com

 
タイトルだけ見ると金融の話のようだが、メインの内容は全く違う。
金融機関には金融工学というものがあり、事業活動をする際にリスク管理をしたり、どういう戦略を立てていくかというものだ。
それに恋愛というジャンルを掛けあわせたものが「恋愛工学」というものだ。
 
いままで特別で神秘的なものと見られていた恋愛を、リスク管理や戦略といったロジカルな視点からそのブラックボックスを解説してくものだ。
 
心理学や本能、生物学、生態学といったものを背景に、モテとは何なのか?女性はなぜ嘘をつくのか。なぜ、多くのJ-POPの歌詞や「世界の中心で、愛をさけぶ」の主人公サクはモテないのか、ISSAはなぜモテるのかといったことがいとも簡単に明かされていくのだ。
 
面白かったのは世間を騒がせた小保方さんについての見解だ。小保方さんは嘘をついていたのか、ついていないのか。なぜ、笠井さんは自殺までしてしまったのか。いままで、いろいろな見解を聞いたけど、藤沢さんの見解が一番納得がいく。
 
気になる方はバックナンバーを単独で購入してみるのもいいだろう。

magazine.livedoor.com

magazine.livedoor.com

 

週刊金融日記では、この恋愛工学がメインとなっている。
藤沢数希さんの恋愛工学の理論と、読者からの赤裸々な質問に対する熱い議論が交わされていく。
 
恋愛プレイヤーと呼ばれる恋愛工学の読者で実践者達の報告により、この恋愛工学はさらにブラッシュアップされていく。なかにはあまりに素晴らしい成果報告から、読者の間で崇められるトッププレイヤーまで現れるくらいだ。
 
メルマガの読者の間でもヒエラルキー(ピラミッド構造)ができるメルマガってあまりない気がする・・・。
ただ、お互いに切磋琢磨する良き仲間のような一体感があり、質問コーナーで誰かの質問に対して他の読者が答え、次の週では質問者の読者から回答者の読者にお礼がされるという不思議なつながりがある。
 
それまでぼくが思っていた女性に対する謎や、自分がなぜ非モテだったのかが明確になった。
原因はマインドだった。その非モテマインドを修正し、恋愛工学を実践していくことでパートナーができるようになった。それとともに、恋愛工学が机上の空論ではないことが証明される。
 
そして、この恋愛工学を小説にしたのが、「ぼくは愛を証明しようと思う。」だ。
とうとう発売されてしまったか・・・。
というのが率直な感想だ。
 
主人公の渡辺正樹は、モテない普通の26歳の弁理士のサラリーマンである。そのわたなべが非モテの状態からモテるようになっていく姿が描かれているが、この本のストーリーだ。
 
しかし、最後の展開はいい意味で期待が裏切られた。
さすがの展開だと思わず唸った。
 
この本の中で、街コンで女性との出会いがうまくいったわたなべが、今度は外で出合いを求めるようになる。そのときに、
「街コンはまるでホテルのプールみたいに快適だけど、狭いフィールドだった。僕は、いよいよ本当の大海原へと漕ぎ出していく……。」
 
 
とあるように、
恋愛工学もメルマガというある種クローズされていた空間から、いよいよ大海原に出る時が来た。
 
これを多くの男性が知ることでモテないことへの助けにもなるし、同時にライバルが増えることにもなる。嬉しいような、悔しいような。
 
ビジネスマンにとって、「7つの習慣」「人を動かす」「思考は現実化する」がバイブルであるように、金融日記読者にはもちろん、恋愛に悩む男性のバイブルとなるであろう書籍だ。
 
既にcakesで連載されていたので、ストーリーをある程度読んだことがある人もいるだろう。

cakes.mu

 
わたなべは彼女ができたものの、実は二股をかけられていることを携帯を覗いてしまったことで知ってしまう。
 
そんなモテない日々を過ごしていたわたなべにある出来事が起こる。それは、彼のクライアントの一人である永沢と六本木ヒルズのバーで再会するのだ。
その永沢は、美女の3人組の方に近寄って行き、その中の一番の美人である女性と15分もしないうちにキスをするのだ。それも、初対面なのにもかかわらず。
 
そして、わたなべは永沢に詰め寄る。
 
そこからわたなべの非モテ生活が変わり始めるのだ。
永沢がなぜ、初対面の美女と15分もしないうちにキスをして連絡先の交換ができるのか、そのヒミツこそが恋愛工学なのだ。
 
 
恋愛工学には
・モテ=ヒットレシオ×試行回数
ラポール形成、バックトラック、
・スタティスティカルアービトラージ
・オープナー
ACSフェーズ
・ボーイフレンドクラッシャー
など、様々な用語やコンセプトが出てくる。
どれもが、心理学や生物学の基礎や、金融工学を元に恋愛に応用したものだ。
 
この小説の中でメインの一つがナンパである。
モテない原因の大きな一つが、出会いの絶対数が少ないことだ。
ナンパはその窓口を広げるというものである。
 
様々なコンセプトがメルマガの中でも紹介されているのだが、正直最初は理解に苦しむ。頭では分かるのだけど実際にどう活かすのかイメージしにくいのだ。
 
例えば、
オープナーを使ってカフェで女性に話しかけるということが、メルマガでは書かれていても具体的にどう活用したらいいのかがわからないのだ。
 
しかし、この小説では具体的に会話の中でどう使われていくのか、どんなパターンで応用されていくのかが具体的かつリアルに描かれている。それがこの本がバイブルである理由の一つだと感じる。
もはや、恋愛工学の事例集のようなものだ。
メルマガで理論を学び、その事例としてこの小説で落としこんで実践していくというフローが使いやすいと思う。
 
ステップバイステップで何をすればいいのかを学ぶのに、ぼくはこれを読んだ。
 
そして、読んでいくうちに思うことが、様々な心理学が出てくるのだが、ぼくはコンサルティングをしたり、コーチングをしていくなかで自然と使っていた。
でも、恋愛には活かしきれていないのだ。
 
女性と信頼関係を築くものの、その先のフェーズをシフトさせていく(信頼関係を築くところから、関係を持ちたいと好意を伝える)ところでためらっていたり、出会った段階での会話の展開のさせ方などにまだまだ足りていない部分が多いことがわかった。
モッタイナイ・・・。
 
永沢はだれがモデルなのか?という疑問が浮かんだ。
金持ち父さん貧乏父さんの金持ち父さんはだれがモデルなのか、といった疑問に近い。
読んでいくと、永沢自身が藤沢数希なのではないかと思ってくる。
永沢の自宅での様子が妙にリアルなのだ。
 
また、主人公のわたなべは、藤沢数希がどこかで出逢って実際にレクチャーした誰かを元に描かれているようにも感じる。
 
わたなべがドンドンとレベルアップしていくところはやや出来過ぎているようにも感じるが、ニュアンスや描写が細かい。もし、これが作家としての想像で書けているとしたら脱帽する。
 
もしかしたら、自身の経験を元描写されているのかもしれない。
そこがブラックボックスなことも、想像をかきたてて面白い。
 
 
恋愛工学は良い面ばかりでなく、強力な武器であるがゆえにリスクがあることも伝えてくれる。
 
そして、この本のタイトルはよく練られている。
タイトルに物語の結末が集約されている。ただ、恋愛工学を使うとうまくいくことが証明されているというものではないのだ。
このタイトルにしたのは、物語の途中でも出てくる「アルジャーノンに花束を」にインスピレーションを受けていルのではないかと思う。
 
最後の展開は、藤沢数希の本心なのか、それとも女性読者の好感度を上げたいのか定かではないが、物語中盤でわたなべが恋愛工学がうまく機能せず、スランプに陥っているわたなべに永沢が言う。

恋愛プレイヤーは、人々をいい気分にするために街に出るんだ。俺たちは、出会った女を喜ばせるためにナンパしないといけない

「でも、恋愛工学では、褒めすぎるのもよくないし、ときに相手の女をディスったりしなければいけない、と教えているじゃないですか。ひとりの女のことばかり思い続ける非モテコミットは、破滅への最短ルートだとも」

「それは違う」と永沢さんは言った。

 
「いつも男に言い寄られてる女に、ありきたりの方法でアプローチしても、喜んでくれない。あるいは、お前のことを、単に身体目当てで寄ってくる、大勢の男のひとりだと思うだけだ。俺たちがときに女をあしらったり、ディスったりしなければいけないのは、そうやって彼女が俺たちに男として興味を示し、俺たちに惹かれたときに、それに答えて褒めてやるためだ。本当の意味で、女を喜ばせるためなんだ」 

恋愛工学を変なナンパ師をつくるとか、デートレイプだと言っている人はこの辺りのほんとうの意味では恋愛工学を理解していないのではないだろうか?

 

スランプを抜け、中盤からヒートアップしていくわたなべの恋愛工学を駆使した局面から、終盤にかけて大きなシフトが起こる。

 

終盤から始まる最後の展開こそが藤沢数希の本心なのだとぼくは信じたい。
 
衝撃のラストへの展開は、ぜひ本を読んで欲しい。